2018/7/1 ベスト7月号 巻頭言を掲載しました
貧血状態が万病の元だ
~昇任試験の要諦としての組織論~
株式会社日本公法 代表取締役社長 麗澤大学名誉教授 元中国管区警察局長 元警察庁教養課長 元警察大学校教官教養部専門講師 大貫 啓行 |
昇任試験で受からせたい人とはどういう人なのか。私的な体験を踏まえ、組織論の要諦を率直に書いてみたい。
私の組織論の根底にあるイメージは人体。私たちの体は実によくできている。体の隅々まで張り巡らされた毛細血管が、必要な細胞に酸素を吸収させている。酸素を運ぶのは赤血球、受け取るのは細胞内のミトコンドリア。体中の細胞がそれぞれの役目を果たせるのも、この仕組みで配られる酸素のおかげ・・・だそうだ。
警察組織も全ての職員が活性化していることが欠かせない。そのために酸素を運ぶ毛細血管が警察署や部・課・係といった職員・組織の間の報告連絡であり、指示命令といった組織管理ということになる。
階級は、警察組織の円滑な管理運営のための手段にすぎない。組織内に活性化の酸素を円滑に配ることを目的としている。究極的には、仕事を円滑にするためにあるということだ。その為にふさわしい人を昇任させなくてはならない。
警察組織を活性化させるという役割を担うのにふさわしい人を選抜するのが、昇任試験の目指すところということだ。
第一に、一言でいえば、皆から一目置かれる存在であること。仕事ぶりはもちろん、私生活でもしっかりしていて安心できる存在であることが前提。個人的には周囲を明るくするような人がいい。
第二に、組織で仕事をするという意識。少なくともそうした配意ができるということだ。組織構成員(仲間)に向かい合い、気を配ることが出発点になる。声をかけ、観察する。健康状態から心の状態まで思いやるのだ。どう振る舞ったら活性化するかという発想。人を押しのけてでも成果を独り占めするというのではなく、仲間からも一目置かれるという存在でありたい。
第三に、組織としての成果を高めること。特に、上級の幹部となればなるほど、組織としての全体の成果に気を配らなければならない。そのためにどうしたらいいのかと考えていること。昇任試験の面接で重視されるのは、こうした視点だ。部下を束ねて、より良い成果に導けるだろうか。要するに、組織を任せられるかどうかということ。
次いで各論に移るが、幹部に私が求めたいポイント・・・
1 「報・連・相」がしっかりできること。
2 率先垂範への意欲。
3 気配りができること。
4 逃げないこと。
5 感謝できること。
昇任試験も、明るく前向きに向かい合っている人が良い結果を生むようだ。楽しむくらいの気持ちで臨んでもらいたいものだ。きっと良い結果が待っていると確信している。