巻頭言

2018.10.01
巻頭言

2018/10/1 ベスト10月号 巻頭言を掲載しました

出題確率の高い不祥事対応考
~永遠の課題~

株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師
大貫 啓行

社内の大方の要請で、立場上、本稿を書かざるを得ないことになった。しかし、賢明な読者が既に分かっていること以外に、殊更付け加えるべき何物もないことは承知している。それを読まされる本誌読者の皆さんも嫌気がさしていることも……。

それにしても、OBにとって相変わらず繰り返される不祥事は何とも情けない。そして、多くの現役の皆さんがどんな思いでいるのかと心配している。
昨今の不祥事の頻度から見て、本年度の昇任試験でこの種出題が激増することは間違いない。ある意味、予想されているという意味で、書きやすい問題との感が強い。しかし、それだけに軽く書き進めるというのでは、合格点にはならない。予想出題だけに実際解答作成は難しいと思うべきだ。少なくとも勘所は外してはならない。
ポイントはどれだけ真剣に考え、少しでも不祥事をなくすべく全身全霊で臨んでいるという姿勢を伝えられるか、真剣な決意表明となっているか、ということだ。

改めて、もう少し具体的に、私なりの考察を進める。皆さんの合格答案を作成する勘所を理解する参考になれば幸いだ。

不祥事を根絶することはできないだろう。しかし、少なくする策はある。その策を愚直に積み上げていく努力を続けるしかない。ある意味、分かり切っているとされることを確実に積み上げてく愚直さの勝負ということ。
人間は飽きやすい。また、慣れに弱い。その弱点をどうしたら補うことができるか。警察の不祥事防止対策はここに集約される。毎日の繰り返される業務が、時には飽きになり手抜きを生むことになることを踏まえた対応だ。その中身は皆知っている。
その中で基本をいかにして着実に成し遂げるのか。その為にこそ、上司による管理業務が求められる。組織管理とは、まま生じがちな、慣れによる慢心や手抜きを防ぎ、組織全体(皆)で基本を追行することなのだ。プロとはそうした基本を確実に成し遂げることだ。

不祥事防止対策と並んで大切なことがある。それは危機対応だ。不祥事根絶はできないとしても、事後の危機対応なら可能ということがミソだ。事後の対応次第でカバーできることは大きい。不祥事案の大半は事後の対応のまずさによってダメージが大きくなっている(非難もそこに集中する)。
階級が上になるということは危機管理力が問われるということだ。特にダメージを少なくする能力は大切だ(ダメージコントロール)。この危機管理でも、市民(都民・県民)の立場に立って考えるということが全ての出発点になる。

一般市民がどう考えているか……という視点が求められる。

組織内の風通しの良さは最善の不祥事防止策だ。組織内での人間関係を、風通しの良いものにすることが幹部に期待されている。そこを踏まえ、自分ならどのような上司になるのかを具体的に描くべきだ。採点者は、型にはまった模範解答を超えた各自の声を待っているものだ。例えば、各自の尊敬できる先輩を思い描いて、その人のどこを模範としていきたいのか、部下への真摯な接し方・声かけ、私ならこうしたい……そうしたことを書きたい。

管理論文は、合否を分ける皆さんの決意表明ということを忘れてはならない。

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