巻頭言

2023.05.01
巻頭言

ベスト2023年5月号 巻頭言を掲載しました

明日の命運がかかる後継者の採用育成
~あなたはどう取り組むか~

株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師
大貫 啓行

 近時、上層幹部が頭を悩ませているのは、ズバリ「優秀な後継者の採用育成問題」である。管理論文や面接の管理分野において、あなたは必ず問われることになる。
 今回は、この問いにどう答えるかを準備するに当たってのポイントを、率直に考察してみたい。

 少子化により我が国の若者の絶対数が減少している背景に加えて、せっかく採用しても早期に退職する人が増加傾向にあることも大きなポイントだ。
 実は、後継者難は何も警察官だけの問題ではなく、我が国では、ありとあらゆる職場で最大の問題となっている。それだけに、各職業間で少ない若者を奪い合っている状態。挙句の果てに、引っ張りだこの若者の職業選択に対する真剣さの低下、安易さもないとは言えない。ミスマッチから早期退職増も目立っている。大卒から3年で3割が転職しているという。私の実感として、教え子たる卒業生もよく転職している。そうした中での警察官採用試験となっているのだ。問題の深刻さの所以だ。

 ということで、警察官採用試験で、年々、募集活動に様々な工夫を凝らしているのは誰しもが承知のこと。募集PR(広報)活動はもとより、警察施設の見学や訪問イベント、警察学校への体験入学やインターンなども一層創意工夫すべきだろう。とにかくやれることは何でもやるべきだ。出身学校へのOB訪問は実績があるので、積極的に実施すべきだ。先輩という親近感から、本音での話が始めやすい。

 しかし、こうしたことだけで解決されるほど簡単な問題ではない。警察の職場をよりよくするための努力が求められる。現職の警察官が、それぞれ自らの職業に誇りを持っていることが最大の前提となるからだ。一人ひとりの警察官が、心の底から自らの仕事にほれ込み、誇りを持っていれば、必ずその姿はきらきらと輝く。警察官がその誇りを持って家族に接していれば、子どもはもちろん、親戚等に対しても最大のPRとなる。家族や友人に対して、現職の警察官であるという誇りを伝えられているか、振り返ってみてほしい。

 そのためにも、警察という職場に改善すべき課題も少なくないだろう。各種見直しによって、効率的の良い執行務にしなくてはならない。各種人間関係の改善などをはじめ風通しのいい職場環境を実現する努力を続けなければならない。職場ぐるみ、総員参加の改善改革機運を大切にしなければならない。これらの改善に、十分ということはあり得ない。
 また、警務や警察学校など採用部門だけの問題だという意識が壁になっていないか。総員参加の下の改善改革運動が求められているという認識。そして、あなたが何をどうしようとしているのか、情熱を込めてこの問題に取り組みますというあなたの真摯な決意が求められている。

巻頭言一覧ページに戻る