巻頭言

2024.08.01
巻頭言

ベスト2024年8月号 巻頭言を掲載しました

築くのは至難、失うのは一瞬
~警察組織に求められるのは情熱ある幹部~

株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師
大貫 啓行

 築くのは至難、失うのは一瞬。単純と言えばこれほど単純なものはない教訓だ。しかし、結局はこの原点に帰る。

 アメリカでは、警察官はどちらかと言えば評価が低い。なりたくない職業の典型といったところ。働く警察官にも、できれば転職したいと思っている人が多い。銃器が当たり前のように所有されている社会での治安維持活動は、危険極まりないという背景もある。
 それに比べて、日本においては、警察官は市民から頼りにされている。交番の赤灯は安心の基だ。夜道を歩く人は交番の赤灯にホッとする。子どもの将来なりたい職業として、警察官は上位の定番だ。弱きを助け、悪を懲らしめるというイメージは揺るぎない。

 それだけに、警察官の不祥事というニュースには、一層がっかりさせられる。警察官への期待の高い人ほど、警察に助けを求めていたストーカー被害者が殺害された、といったニュースに失望する。まして、警察官による犯罪などは論外。警察官と言っても様々、中には例外がいることは誰でも分かっているが、それでもがっかりする。それは警察官への期待の大きさの裏返しということでもあるのだ。

 OBとしては、現役の皆さんには、国民の期待に応え、不祥事防止への取組をお願いしたい。職務に関してのミス防止は、毎日の総員による基本の確認に尽きる。職務上のミスは基本の逸脱。早い話が、慣れからくる手抜き。これは相互の注意で防いでいくしかない。
 あれもダメこれもダメというのではなく、仲間と団結して目標に向かい、「月間目標達成」「係間競争での勝利」といった“前に向かっての取組”となるような職場の運営が最も望ましい。管理の要諦は、「前向きな目標に向かって係員を燃え上がらせること」なのである。

 昇任試験対策では、幹部として、どうやって不祥事を防止していくのかをアピールすることが合格への要となる。特に面接では、管理能力、中でも部下に対する指導力が重視される。要するに、職場の総員をどうやって統率するのかという能力を見極めたい、ということ。人間としての魅力、指導者として惹き付けるものの有無を見たいのだ。そこを見極めたいがために、信条や尊敬する人などについて質問がなされる。
 そういう狙いを踏まえたうえで、部下をどのように指導するのか、その情熱を込めた姿勢での答え方を心掛けるようでありたい。面接官の意図を理解したうえで、情熱を感じさせることの大切さをしっかり理解して取り組んでほしい。目をしっかり見て、落ち着いた受け答えをする。力のこもった、しっかりした発声をする。「昇任して、先頭に立って、率先垂範します。」という熱意をぶつけるのがいい。部下の顔色をよく見て、健康状態やそれぞれの身上にまで注目して把握することを語るべきだ。そうした幹部が風通しの良い職場を作る要だからだ。
 そこを担えるというアピールが、合格をもたらす。繰り返しとなるが、皆さんにはこうした勘所を意識して臨んでほしい。

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