巻頭言

2025.02.01
巻頭言

ベスト2025年2月号 巻頭言を掲載しました

率先垂範
~常に先頭に立つという姿勢~

株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師
大貫 啓行

 トランプ大統領に対する昨年7月9月の暗殺未遂事件の衝撃の映像はインパクトがあった。その後、フロリダでゴルフ場にライフル銃を持った容疑者が侵入し、狙撃チャンスを待ち構えていたという事態もあった。
 アメリカ社会の問題点があらためて明らかになった。同時に、選挙における警護・警備の難しさが浮き彫りになった。多くの人にアピールしたい対象と群衆との距離の取り方の困難さ。ある意味、議会制民主主義の根幹に関わる問題といえる。

 安倍元首相銃撃事件も選挙応援の事件だった。岸田前首相が和歌山で襲われたのも選挙応援。選挙は警備の鬼門。本年も夏の都議選に参議院選と選挙が予定されている。
 しかしながら、警察の視点として、完全な警備はそもそも不可能なのである。そこで、いかにしてより完全な警護を追求するのかというところに帰結する。警察の任務の宿命だ。アメリカの事例を含めあらゆるケースに学ぶということになる。

 情報収集が最も重要。事案を振り返ってみれば、犯人にはいずれも兆候がある。ウクライナ支援打ち切りへの不満、Xへの投稿、現場徘徊、銃器購入、射撃練習、社会との分断孤立、不満、悩み……などなど。我が国も与野党の争い激化する局面であり、政治状況は波乱含み。警戒を要する情勢が続く。
 後知恵と言えば後知恵ではあろうが、あらゆるテロには、兆候があり、そこに対策の取っ掛かりはある。そのコツコツとした教訓に学んだ積み重ねが何よりも貴重なのだ。心理面でのふるいもあるだろう。心理学など専門家の協力も得なければならない。
 格差拡大、価値観の対立・分断、あるいはSNSの普及も極端な傾向を助長する。アメリカに比して、日本の銃器規制が警護においていかに重要かは、あらためて指摘する必要もない。銃器規制、取締りなどの日常業務の重要性を強調したい。

 昇任試験対策としては、いかに一人ひとりの警戒心を上げるかが重要だ。その先頭に立って当たりたいという決意表明に徹することだ。そのために部下一人ひとりとどのように接するか。毎日の部下の変化に注意深く、部下と話す際には相手の顔を見て話すといった自分なりの心掛けを強調することが有効だ。率先垂範。常に先頭に立つという姿勢を強調したい。
 何事も万全の策はない。そういう中での任務遂行のやりがいといった前向きな信念を重視したい。具体的に先輩などを目指すといった「実体験に根差した決意表明」が面接などで好印象なことには留意してほしい。

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