巻頭言

2019.04.01
巻頭言

2019/4/1 ベスト4月号 巻頭言を掲載しました

組織の総力を挙げた採用活動
~全員が一人の応募者を獲得しよう~

株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師
大貫 啓行

若者の減少期、各方面での大卒採用者獲得競争はますます熾烈になることは必至の情勢だ。民間企業では就職協定を破ってでも好ましい人材を獲得しようという本音があらわになっている。
警察官の採用活動は一にも二にも応募者を増やすことから始まる。昇任試験でも採用活動に関する具体的な提案、取組活性化の方策等を問う出題も予想されよう。本誌読者にあっては十分な備えをしておくべきだ。今回はその際の参考になればと考察をしてみたい。

警視庁では、大卒採用数を昨年度の年間1,900人から1,100人へと絞り込む、オリンピック後への採用数の絞り込みといえよう。しかし、人材の質の確保への取組は一層強調されることは間違いない。それには、当然のことながら、とにかく応募者数を組織挙げて増やすことから始まる。
母校訪問活動、学校のオープンキャンパスなどへの取組強化は当然だ。

ここでは、母校訪問を例に具体的に検討してみたい。どのような形であれ、抽象論ではなく、具体的な記述が評価されることを忘れてはならない。
まず、何より大切なのは、警察官・職員が一人残らず、募集活動担当だという意識改革ではないか。こう述べて、決意表明をすべきだ。勤務中はもちろん、勤務外でも若者がいれば、警察官の仕事のやりがい、面白さから待遇の充実していることなどを上手に話題にするなど積極性が肝要だ。一人が一人の応募者を獲得するぞ!…という心意気でありたい。
若者にとって、一番心を開くのは、卒業生だろう。私は大学のキャリアセンターで学生の就職支援をした経験がある。学生にとっては先輩が学校を訪問し、学生の質問に親身に乗ってくれる機会はありがたい。その際も、一工夫が望ましい。大勢を前にした話だけではなく、それが終わってからの、個別での懇談がいい。それも一人を相手にした接触がいいのだ。
一回だけの接触ではいけない。いかにして二回目の接触に結び付けることができるかの工夫が大切だ。その為にも、接点のあった学生に名刺を渡し、いつでも訪ねてくるように誘うべきだ。渡す名刺には自分の手による書き込みが欲しい。「気軽に連絡してください」など…。
運動クラブなど、部活の場にも足を運びたい。より身近に感じさせる分、幾ばくか有益だ。そこでは、部活経験は警察官として有益なことを強調すべきだ。「歓迎されるよ!」と…。

将来に対する不安を抱えている若者の心理を理解すべきだ。経済環境の変化が大きく、何かと将来への不安を抱いている若者には、公務員としての身分保障、安定性は警察官の強みだ。
交番での勤務、警ら、巡回連絡などあらゆる場において、若者と接触する際には、学校訪問の要領と同様な注意になる。とにかく、全警察官・職員の存在がそのまま警察へのイメージや評価に直結するということを忘れてはならない。この意味で、親戚への影響力は絶大だ。冠婚葬祭はリクルート活動の場でもあるということだ。

警察組織の将来は後継者の確保、育成にかかっている。

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