巻頭言

2023.09.01
巻頭言

ベスト2023年9月号 巻頭言を掲載しました

後継者採用・育成は組織存亡の要
~情熱あふれる幹部を求めている~

株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師
大貫 啓行

 「後継者育成のために、あなたがなすべきこと」……管理論文で最も出題される永遠の課題。その答案作成に資するため、出題者が求めているものを改めて考察してみたい。

 優秀な後継者の獲得・育成は、警察にとっての喫緊の大きな課題となっている。我が国の若者の絶対数が減少している背景の下、各方面で優秀な若者の取り合いになっている。加えて、せっかく採用しても早期に退職するケースが増加傾向にあり、問題の深刻さを見せている。
 繰り返し強調すべきは、後継者難は何も警察官だけの問題ではなく、我が国のありとあらゆる職場で最大の問題となっている。各職業間で少ない若者を奪い合っている状態。挙句の果てに、引っ張りだこの若者を見れば、職業選択に対する真剣さの低下、安易さも見られ、ミスマッチからの早期退職も目立つというわけである。大学卒業後3年で3割が転職しているといわれ、私の実感としても、教え子たる卒業生もよく転職しているように感じる。そうした中での警察官採用試験となっているのだ。

 ということで、警察官採用試験において、年々、募集活動に様々な工夫を凝らしているのも誰しも承知のこと。募集PR(広報)活動はもとより、警察施設の見学や訪問イベント、警察学校などへの体験入学やインターンなども更に一層創意工夫すべきだろう。とにかくやれることは何でもやるべきだ。
 出身校へのOB訪問は実績があるので、一層積極的に実施すべきだ。先輩という親近感から、本音での話が始めやすい。

 しかし、こうしたことだけで解決されるほど簡単な問題ではない。警察の職場をよりよくするための努力が求められる。現職の警察官がそれぞれに、警察官という職業に誇りを持っていることが最大の前提となるからだ。
 一人ひとりの警察官が、心の底から自らの仕事にほれ込み、誇りを持っている。その結果としてのきらきらした姿を見せてほしい。その姿をしっかり家族に見せていれば、子どもはもちろん、親戚の子弟への最大のPRとなることは間違いない。
 そのためにも、各種見直しによって、効率の良い執行務にしなくてはならない。各種人間関係の改善などをはじめ、風通しのいい職場環境を実現する努力を続けなければならない。職場ぐるみ、総員参加の改善改革機運を大切にしなければならない。
 警務や警察学校など、採用部門だけの問題だという意識が壁になっていないか。総員参加の下の改善改革運動が求められているという認識。そして、あなたが何をどうしようとしているのか……という真摯な回答が求められている。

 改めて言うまでもなく、型にはまった回答を求めているのではない。あくまでも、あなたの情熱を伝えることに尽きるのだ。

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