ベスト2024年9月号 巻頭言を掲載しました
昇任試験に臨むに当たり、警察の抱える課題
~改革へ積極的に臨む姿勢~
株式会社日本公法 代表取締役社長 麗澤大学名誉教授 元中国管区警察局長 元警察庁教養課長 元警察大学校教官教養部専門講師 大貫 啓行 |
昇任試験で最も重視されるのは、いつでも決まっている。ズバリ、幹部として託せるかどうかということ。
今警察が抱えている課題については、いつどんな形であっても自分の考えを示せる準備をしておくことが肝要だ。
まず挙げるのであれば、「若手警察官の指導育成」は、管理論文で必ず問われることからも分かるように、警察における喫緊の課題である。自分たちの経験を基にしつつ、時代に合った後進の指導育成論は、必ず用意しておこう。
その延長で、採用募集活動に関しても問われることがある。思いつくまま、どのような視点で問われるかを挙げるなら、「出身の高校や大学に顔を出したことはあるか」や「普段の仕事で警察官に興味がありそうな人と出会ったか」、「親戚や知人に警察官のやりがいなどを話しているか」等の切り口で問われる。これに対する回答は、普段から自らの職務に自信を持って取り組めている、という姿勢の表れにもなる。信頼される警察を体現できていれば、人も集まり、指導育成によって現場執行力の強化にもつながる。この流れを意識して整理し、自らの体験を落とし込み、問われたら示せるようにしておこう。
「実務能力の向上」も課題である。情報技術の進歩に伴い、日々の職務執行においても、前例の少ないものが多い。ITやSNSに関心があり、積極的に利用しているなど、情報技術の進歩に前向きなことも欠かせない。警察業務の改革も必至であるから、人材不足に陥らないようにするため、とても重要な課題なのだ。
そこで特に若い皆さんには、その中核的な担い手になることが要請されている。生成AIを使うことでどういう省力化ができるか、などを提案できるくらいの意欲が求められる。
また、外国人との接点が増えることも必至である。警察として、国際化に向けた改革が進んでいく。それにどのような準備をすべきか?前向きな意欲が評価を高めることになる。
最後に、基本中の基本である公務員としての倫理観、警察として言えば、「不祥事防止対策」への関心が欠かせない。部下同僚を束ねて若き幹部としてどのような心構えで臨もうとしているか?紋切り型の、型にはまった答えでは、評価は低い。求められるのは、情熱だ。不祥事を起こさない組織にするために、全力を傾けて臨みたいと、自分の言葉で思いを伝えること。それに勝る対応はない。要するに、「昇任して先頭に立って全力で働きたい」という意欲を伝えることが、合格の最大のポイントなのである。
なお、これは昇任試験の場だけに限った話ではない。むしろ、日常の何気ない場や仕事ぶり等で持たれる印象の影響は思ったより大きいということも知っておこう。同僚や先輩にもある意味評価されているわけであって、実は、これが昇任の一番の戦場なのだ。警察という職場は思ったより狭い。そこでの評価は自然に定まるものなのだ。昇任試験はその後付けにすぎない。昇任試験に向けて、日常の過ごし方から省みることも肝要だ。