ベスト2024年12月号 巻頭言を掲載しました
ニュースに追いかけられた一年
~2024年の回顧~
株式会社日本公法 代表取締役社長 麗澤大学名誉教授 元中国管区警察局長 元警察庁教養課長 元警察大学校教官教養部専門講師 大貫 啓行 |
毎年のことだが、歳末警戒の声を聞くと急に時の経つのが早く感じられようになる。あっという間に2024年の終わりもいよいよ押し迫ってきた。恒例により、過ぎ行く1年を振り返ってみたい。
今年は、ニュースに追いかけられっぱなしだった印象。
元旦早々、新年のおとそ気分も能登半島地震に襲われ消え去った。全国警察一丸となった緊急支援展開。翌2日は羽田空港での能登支援に向かう海保機と日航機の衝突炎上事故。日航機での全員無事脱出は不幸中の幸いだった。年の始まりにダブルパンチで、今年の多事多難さを予感させた。
大地震災害では課題が多い1年だった。能登半島地震では過疎地の、しかも半島という交通アクセスの難しい中での救援活動であった。自立型支援のできる機関のメリットが痛感させられた。警察として更に教訓を生かして国民の期待に応える努力が期待される。
大地震については、8月に南海トラフ地震で初の注意情報が発令された。急遽海水浴場の閉鎖、お祭りなどの開催について混乱が生じた。今後の教訓を得る良い機会となった。
温暖化の影響か、各種自然災害も発生した。特に、8月の台風10号が迷走したことによる豪雨長期化で、洪水やがけ崩れなどが多発した。9月には、地震災害から復興の歩みを始めたばかりの能登地方において、豪雨・水害に土石流までが発生して多大の被害が出た。気候温暖化の影響とみられる猛暑で熱中症などの記録的な多さも注目された。
治安上の警戒を要する課題として、SNSなどネット空間での問題が注目された。匿名・流動型犯罪グループに対する戦略的取締りが新たな課題として浮上した。国内の闇バイトでかき集めた犯罪集団による強盗、殺人といった凶悪犯罪に多くの人々の不安が高まった。犯罪者相互がアルバイトでの臨時、という連携のなさから、捜査において従来の手法と異なるアプローチが求められる。暴力団・準暴力団などの従来の枠組みにとらわれず、SNSや求人サイトで実行犯を募集、匿名性の高い通信手段を活用しているのだ。
また、子供がSNSでのいじめなどから自殺するといった事案も多発した。これもサイバー空間での脅威といえるだろう。14歳未満のSNS使用を禁止するという提案も出ている。
内外のビックニュースはほかにも多かった。
国内では、自民石破、立憲野田へと与野党トップが変わった。10月には総選挙が行われ、第一線警察官には休む暇のない忙しさだった。
世界の指導者も相次いで交代した。その代表は11月のアメリカ大統領選でのトランプ前大統領の再登場だ。最後まで勝者の分からない大接戦だった。アメリカ社会の分断はこれからも大きな注目点として残った。
少子高齢化の影響もいよいよ各方面に目立つ中、警察としても、新規採用試験への応募者の減少などが顕著になっている。後継者確保は治安活動の大前提であることから、全力を傾けた対応が急務である。
いろいろあったが、いよいよ迫る年の瀬。行く年の課題を踏まえ新たな年への抱負・決意を固めたい。皆さんにとって良い年にすべく決意を固める絶好の機会としていただきたい。本誌執筆する一同、皆さんの念願成就への支援を誓って年末のご挨拶としたい。
ご家族おそろいでお元気に新たな年をお迎えください。社員一同、皆様の平穏でお健やかな年越しでありますよう、心よりお祈りしています。