巻頭言

2025.01.01
巻頭言

ベスト2025年1月号 巻頭言を掲載しました

改革への志が問われる時代
~2025年の展望~

株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師
大貫 啓行

 あけましておめでとうございます。
 社員一同、決意を新たに皆さんのお役に立てるよう精進するとともに、目標を成就されますよう心から祈念しております。

 早速、本年における内外の課題を展望してみたいと思います。
 治安の観点から見て、国際情勢は毎年のことながら極めて波乱要因に満ちています。しかも、今年は例年にも増して難しい問題に満ちている印象です。
 何といっても、「世界の警察官」としての役割を自他ともに認められ、担ってきたアメリカの衰退は著しいものがあります。国力の低下に加え、その意思も希薄になってきている印象です。その原因は、イラク、アフガニスタンで醸成された厭戦気分のまん延です。加えて、ロシアによるウクライナ侵攻や、イスラエルのガザ戦争に関連する中東の対立が泥沼化して、収束する見込みのない状況があります。
 欧米主導の秩序に挑戦する中国・ロシアのみならず、グローバル・サウスと言われる勢力は欧米に対する不信感を抱いており、その影響力が強まっています。その中でも特に、アメリカと中国の分断、相競い合う様相はますます厳しさを増しています。

 日本の治安にとっては、隣国中国の動向が最も影響が大きく、台湾や南シナ海での中国の「力による現状変更」への強硬な意思は、大きな懸念材料です。我が国の固有の領土である尖閣諸島に対する現状変更の実力行使と同様に、国内治安に対する影響も多大なものがあります。建国100周年に当たる2049年にアメリカに並び、これを凌駕することを目指す、中国の動向には注意が肝要です。本誌も折に触れて関連する解説を提供します。
 あわせて、核兵器の開発・改良やロシアへのミサイル供与などの軍事支援を進める、北朝鮮の軍事立国路線への傾注ぶりも大きな懸念材料です。
 対する日米韓の動きと相まって、東アジア地域の安全保障環境がにわかに世界的に注目される流れになっています。

 欧米の世論の二極化分裂傾向の激しさも深刻な問題であり、英国でのネット上の偽情報による反移民暴動、アメリカでの反移民、気候変動対策などでの国論の先鋭な対立による治安問題化が著しくなっています。昨年のアメリカ大統領選挙では、「内戦」という言葉が真剣に語られる程でした。
 我が国では、そうした分断は欧米ほど激しい状況にはありませんが、欧米の動向への関心は大切です。

 国内の動向では、夏の参院選に向けての政争が激しくなるでしょう。要人警護の万全を期す警察の対応が、国民から期待されること必至です。
 ネット空間への対応も、引き続き大きな課題となりそうです。SNSの青少年への影響は甚大であり、自殺増加などへの対策のほか、闇バイトをはじめとして問題となっている匿名・流動型犯罪グループへの対策など、新たな犯罪対応が焦点になるでしょう。
 若者の減少が進む中、警察官の新規採用は将来の人材確保にとって最大の課題です。採用活動の組織を挙げての取組が必須です。
 また、交番駐在所の24時間体制の柔軟な運用も本格的になります。住民の要望を踏まえた第一線警察活動への様々な工夫に期待したいと思います。

 最後に、昇任試験について私見を披露したいと思います。昇任試験では、変化の求められる時代の趨勢に鑑み、改革への積極的な意思の強さに対するニーズが高まること必至です。
 上に触れたような情勢認識や関連課題に対する認識が問われます。特に面接においては、志のあることを伝えることが肝要です。採用への取組として、高校・大学でのPRや勧誘活動を促進するといった積極姿勢のアピールは有効でしょう。

 本誌での勉強を続ける会員の皆さんを全力で支援すべく、社員一同、決意を新たにして取り組んで参ります。本年もどうぞ御期待ください。

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