ベスト12月号 巻頭言を掲載しました
19年の回顧
~2019年を振り返って~
株式会社日本公法 代表取締役社長 麗澤大学名誉教授 元中国管区警察局長 元警察庁教養課長 元警察大学校教官教養部専門講師 大貫 啓行 |
年の瀬を迎えるに当たって、残り少ない2019年を振り返ってみたい。節目節目で過去を振り返り、新たな年を迎える準備をするのは有意義だ。
治安を考える前提として、その根底にある時代を認識することは大切だ。そうした意味で、長期的に治安に影響を及ぼすと思われる大きな諸要素を7点にまとめ、考えるヒントを提供してみたい。毎年繰り返され、代わり映えのしないように見えるかもしれないが、その中から時代の変化を読み解く視点が肝要だ。
警察官昇任試験対策という面では、これらの諸点にしっかりした見識が求められていることは言うまでもない。
1 令和への代替わり
平成から令和へと代替わりした。代替わりに伴う諸行事を滞りなく執り行うに当たって、皆さんが最大限の努力をし、縁の下から支えたことに敬意を表したい。最も根底となる治安の安定について、改めて認識させられた一年であった。我が国独特の象徴天皇制について、理解を深めることも肝要であろう。
2 相次いだ大型警備
代替わりの諸行事はもちろん、大阪でのG20等、大型の警備が相次いだ。これからもますます国際交流が活発化し、それに連れて警察に課される任務が重くなることは必至となる。時代・環境の変化に合わせた警備の在り方について、それぞれの立場で決意を新たにしなければならない。官民協力の視点がポイントとなろう。
3 人口減少
少子高齢化がいよいよ深刻化している。警察として、それぞれの持ち場で課題として取り組むべき事項が少なくない。高齢者の交通事故、空き家対策、孤独死、特殊詐欺などは、根本にある少子高齢化のそれぞれの局面と捉えられる。
4 格差拡大
就職氷河期問題など、社会の様々な歪みの影響が顕在化しつつある。中高年の引きこもり増加などもその典型的な事例だ。児童虐待死や農水省次官が息子を殺害した事件など、耳目を集めた事件が相次いでいる。就職氷河期のような、世代の挫折と呼ばれる問題は、治安に与える影響も少なくない。
5 相変わらず多発する災害
今年も、台風などの災害が多発した。100年に一度、といった気象当局の発表も日常化した印象だ。警察としては、東日本大震災をはじめとする過去の教訓に学ぶことが肝要だ。
6 後継者獲得問題
いよいよ大卒者の減少が顕著になった。若者の取り合い状態で、警察としても採用問題が深刻になった。組織を挙げて後継者の獲得・育成に真剣に取り組まなければならない。
7 国民の期待に応える隙のない勤務
全国的に警察官を対象にした襲撃事件が続いた。また、警察官の不祥事の根絶も程遠い現状だ。「強く、たくましく、頼りになる警察官」という国民の期待に応えるべく、一層の鍛錬を願いたい。
終わりに、本誌読者の皆さんには、それぞれのご家族と共に行く年を顧み、幸せに満ちた新たな年を迎えられるよう、社員一同、お祈りしている。